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  • 執筆者の写真RJ Industry Japan Press

【SPOTME】最新鋭トラッキングシステムSpotMe、英国国立劇場の「ミルクウッドの下で」において本領を発揮

照明デザイナーのティム・ルトキンは、この夏、国立劇場で大成功を収めたディラン・トーマスによる『ミルクウッドの下で』の舞台上演において、Robert Juliatの最新鋭トラッキングシステム、SpotMeを2台採用しました。彼らにとってトラッキングシステム2台を同時に操作する公演は、初の試みです。


© Johan Persson


SpotMeは、フォロースポット技師の操作から照射位置の情報を把握し、リグに設置された灯体を連動して出演者を追従する世界でただひとつのトラッキング・システムで、完全に自動化されたトラッキング・システムよりもさらに芸術美を追求した仕様となっています。


長年、完全自動型のトラッキング・システムは経験してきたものの、オペレーター操作ありきのトラッキング・システムは初体験であったルトキンは、SpotMeの特長を試すことに興味津々でした。結果、従来のトラッキング・システムとは桁違いの、まるでなにかの彫刻を想わせるような繊細さと創造性あふれる照明デザインが生まれました。


英国国立劇場における『ミルクウッドの下で』の照明監督を務めたジャック・チャンピオンはこう話します。「ティムはSpotMeで新たなスタイルでの照明デザインを試しました。フォロースポットそのものの照明はほとんど使わず、SpotMeの位置情報を利用しながら、複数のムービングライトでパフォーマーを追ったのです。2台のうち1台のSpotMeを主役のマイケル・シーンに、もう1台を残りの出演者に用い、ある時には一部の照明だけを連動して一部の出演者のみにフォーカスし、思い通りのタイミングで照明を外すというテクニックを実現しました。たとえばムービングライトで出演者を追った後、フェードオフして同じライトを別の出演者にあてるのではなく、一部のムービングライトを連動から外して動かないでいる出演者たちにあてながら、また新たなライトをSpotMeに連動させて別の出演者にあてる、といった具合にです。フォロースポット・オペレーターが照明全体の動きを制御できるため、より滑らかで生き生きとしたライティングとなり、繊細かつ洗練された効果を生む、SpotMeの一歩進んだ活用術となりました。とてもスムーズで、舞台やシーンに適した結果を創りました。」


「SpotMeは見事に、人の手によるフォロースポット操作の繊細さ、うつくしさ、精確さをムービングライトに反映してくれます。」ルトキンはこう話します。「リグに設置したどの灯体群とも連動でき、出演者にチップを取り付けなくても正確にフォローすることができるので、新次元での照明デザインが出来るのです。」


「トラッキングの真の実力は、フォロースポットの代用として他の灯体を使うことではなく、さりげなく照明デザインをレベルアップしてくれることで発揮されるのです。

© Johan Persson


国立劇場の照明制御マネジャー、ダン・マーフィンもこれに同意し、こう話します。「一般的に、出演者が舞台空間で滑らかに動く際にも、照明はキューをもとに動いていることが多々あり、エフェクトや気の利いたフェードによって世界観を生み出します。ある位置の出演者から別の位置の出演者へと照明を移す際にも、実際には別々のリグに設置された灯体を使用しているのです。出演者を文字通り"フォローする"ことはほとんどないし、エフェクトを可能にするにはプログラミングに相当の微調整と時間を要します。SpotMeはこうした一連の作業を、リアルタイムで操作しながら瞬時に可能にしてくれるのです。別々の灯体を使用する代わりに、フォロースポットの動きと連動してダイナミックなライティングを実現し、シーンを作るキュー出しの役目を果たしてくれます。」


「SpotMeのいちばんの長所は、オンタイムで人間が照明を操作できる点です。素早い動きには高速モードに切り替える、オーバーシュートに対応する、プログラム内容が多岐に渡り重くなる場合にはレイテンシーを調整する等、全自動のトラッキングシステムで必要なあらゆる作業が、SpotMeでは必要ないのです。なぜならこういう事前の作業は、フォロースポット・オペレーターの現場でのスキル予測からくるものだったからです。」


「そのうえSpotMeさえあれば、フォロースポットの所持数にも左右されません。照明機材全体だけではなく、映像や他の機材さえ連動できるのですから。このタイプのライティングはとても刺激的で、照明業界ではまだ新しく、興味深い、クリエイティブなエリアです。」


SpotMeはトラッキングシステムという枠を超えて、機材のあらゆる要素のフル制御を可能にしました。「組み立てとSpotMeマーカーのキャリブレーション(必要となるのは一度だけ)が、最も時間を要する作業となります。」マーフィンはそう話します、「しかし一旦、4つのSpotMeマーカーが劇場空間に設置され、照明が連動してしまえば、あとは簡単です。照明機材の微調整もSpotMe経由で行うことができます。たとえば出演者が舞台後方へと移動する際にズームの幅を狭めたり、ビームのシャープネスを維持したり、出演者が灯体に近づいたり離れたりする際にビームの強弱を調整して同じ明るさを保ったりという、テレビや映画には欠かせない機能を果たすことが可能です。出演者の位置がわかれば、その人物に照明をあてるだけではなく、ほかの機材のパラメータを入力し、後はシステムに任せます。」こうした特長により、SpotMeは基本的なプログラミングが出来る照明デザイナーにとって、たいへんん便利なシステムとなっています。」


国立劇場の照明機材マネジャー、ポール・ホーンズビーによると、SpotMeには照明デザイン以外にも、現場の作業上でも長所がある、とのこと。「この劇場で公演内容が多彩なため、柔軟性が必要です。アリーナステージ形式やエンドステージ形式に切り替えたり、ショーによってもフォロースポットの位置が変わります。フォロースポット技師は客席後方のオペレーション卓やステージ裏を行き来することもあり、2名必要です。ブリッジはあまり快適ではない場合もあり、ショーの前後あわせて長時間にわたる待機となります。リグ担当や技師はハーネスを装着しなければならず、キュー・リストなどをどこに置くかなどにも気を遣います。すべてにおいて健康や安全への配慮が求められ、多くのリスクアセスメントを要します。SpotMeを使えば、ブリッジに設置したムービングライトを、自らブリッジに上がることなく、ステージ前からフォロースポットとして操作することが可能です。SpotMeはどの灯体とも連動できるため、フォロースポットを操作する位置からステージ上のどんな位置にいる出演者にも照明があてられます。従来より安全で、もっと楽しめる作業となりました。ロバート・ジュリアのフォロースポットと腕の良いオペレーターがいますから、SpotMeに投資したのは自然な流れでした。」


SpotMeは英国のRJ専属代理店であるアンバースフィア・ソリューションズから、英国国立劇場に提供されました。


『ミルクウッドの下で』は2021年6月16日から7月24日にかけて公演を行い、大好評を博しました。


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